~~~前回からの続き~~~
そんな条件にピッタリの万惣ではあったが・・・
20代後半の男がフルーツパーラーの新入りアルバイト。
どこでもそうだろうがこの道でプライドを持った若いフレンチのシェフ達の中にはイヤミを言う人、無視する人などもいたことは事実。
逆にそうじゃないと職人じゃないと思う。
しかし当時の僕はずいぶんと嫌な気持ちになったこともあった。
こういうと語弊があるかもしれないが夢に向かっているとはいえアルバイトという立場が恥ずかしかった。
なんとなく当時の友人とは疎遠になった。
もちろん自分から。
逢いたくなかったから。自分の現状を知って欲しくなかったから。
その頃の友人達はといえば安定した会社勤めでぼちぼち結婚もし始めたり、いい給料をもらっていたりと皆自信に満ちていた。(ように見えただけかもしれない)
そういう人達とは逢いたくないくらい心も荒んでいた。
友人達がまぶしく見えて自分が惨めに感じた。
大事な友人の結婚式も申し訳ないのだがとても出れる状況ではなかった。金銭的にも心持ちの面でも。(今でも申し訳なく思っているがきっと理解してくれていると思う)
心が乱れている時とはそんなもんなのだろうか。
自分の生き方が定まらない不安な気持ち。
そんなどうしようもなく苦しい時に『頑張れよ』と声を掛けてくれた万惣のベテラン社員の方達。
『あいつの態度は気にするな』
『俺の息子も鍼灸の学校に行ってるんだ、君も頑張れ』
『今度休憩室でちょっと俺の肩と首触ってくれよ』
『開業したら教えろよ』
すごく忙しいときに仕事をあがりづらい雰囲気の時でも『ほら、学校の時間だぞ、行け、行け』。
今でも思い出すと感謝の念しかない。
人情の溢れるベテラン社員さん達の優しい心遣いが辛い毎日を送る僕の心に日々沁みた。
今ではあの頃のオジさま達は皆さんどうされているのだろうか。
もうとっくに万惣を退職されているとは思うがお礼を言わなければいけない人達がたくさんいる。
そんな人情溢れる老舗の懐の深さみたいなものもひしひしと感じながらの毎日だった記憶がある。
~~~続く~~~

